本品は、「平安堂巳ん典」作による、蝋色塗の吸物椀 十客組です。外側は艶を抑えた黒漆蝋色塗で仕上げられ、椀内部には各椀ごとに異なる文様が色蒔絵で描かれた「画変（えがわり）」構成となっています。

文様はいずれも、江戸後期の漆芸家・佐野長寛（さの ちょうかん）が制作した吸物椀に見られる図柄をもとにしたものです。菊桐、牡丹、瓢箪、櫻紅葉、宝相華などの吉祥意匠が椀ごとに描かれ、写しとしての性格を備えた組物となっています。

佐野長寛は、寛政6年（1794）に京都の塗師の家に生まれ、各地を歴訪して漆芸技術を学び、文政5年（1822）に京都で開業。高麗の名工・張寛に私淑し「長寛」と号しました。意匠の自由さと風雅を特徴とし、幕末の京都漆芸界に影響を与えた人物です。

作者「平安堂巳ん典」は、山田平安堂に所属する作家で、蒔絵香合や椀などを中心に、茶道具や漆工芸品の制作を行っています。

• 商品名：平安堂巳ん典造　長寛写　画変蒔絵　蝋色塗吸物椀
• サイズ：直径12.9㎝　高さ9.3㎝　高さ（身）6.8㎝
• 価格：800,000円