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秋草蓋内鈴虫蒔絵 吸物椀 10客組

E719
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黒塗地に秋草文様を蒔絵で表した吸物椀十客組である。椀全体におよぶ秋草の意匠は、薄や萩を写実的かつ優美に配し、四方を囲むようにして描かれている。金と銀の彩色を使い分けることで、植物の種類や奥行き、風の流れまでも感じさせる繊細な構成となっており、秋の風情を椀全体にたたえている。

本作の特色は、蓋裏に描かれた鈴虫の意匠にある。鈴虫は古来より秋の訪れを告げる虫として和歌や物語に詠まれてきた存在であり、秋草と並び称されることも多い。蓋を取った際にのみ現れる鈴虫の蒔絵は、見えない部分にも情趣を凝らす日本独特の美意識を体現している。用の美と季節の象徴性を融合させた構成は、懐石や茶事の場において一層の趣を添える。

意匠の主題である秋草は、平安時代の『源氏物語』や『枕草子』にもたびたび登場するように、古くから日本文化において情趣や哀感を象徴する題材として親しまれてきた。一方で鈴虫の意匠は、音による秋の表現として視覚と聴覚の双方を喚起する演出とも言える。こうした詩情豊かな構成は、単なる食器としての機能を超え、季節の演出を担う器として高い完成度を示している。

  • 商品名:秋草蓋内鈴虫蒔絵 吸物椀 10客組
  • サイズ:直径12㎝ 高さ8.5㎝ 高さ(身)5.7㎝
  • 価格:350,000円
2025-06-16 | Posted in itemsComments Closed