総黒青蔦蒔絵 吸物椀10客組

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本品は、黒漆地に青蔦を総蒔絵で描いた吸物椀の十客組。艶やかな黒地に、青緑の蔦葉が瑞々しく映え、金線で細やかに描かれた蔓が器面を流れるようにめぐります。蓋と身にまたがって連続する構図は、閉じたときにも一体の景色として完成するよう設計された、丁寧な意匠構成が特徴です。

「蔦」は、蔓が力強く伸びて絡み合いながら繁茂する様子から、「繁栄」「長寿」「家運隆盛」などを象徴する吉祥文様とされ、古くから調度や器物の意匠に好んで用いられてきました。特に本品のような青蔦の表現は、落ち着いた品格と清涼な印象を併せ持ち、格式を保ちながらも現代的な美しさを感じさせます。

蔓の動きは器全体にわたって流動的に展開されており、静と動の対比が美しく、使う場にふさわしい格調と視覚的な楽しさを添えます。蓋裏や椀内にあえて装飾を設けない構成は、外面の意匠を際立たせ、料理の映える余白としても機能します。

十客が揃った組物として、もてなしの席や季節の設えに適した一組。祝儀や懐石の場にも映える、静謐な華やぎを備えた蒔絵椀です。