大橋荘兵衛造　正法寺蒔絵　雑煮椀　10客組

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本品は、漆器名工・大橋荘兵衛による「正法寺蒔絵」の雑煮椀、十客組。黒漆地に朱と金を配し、梅花文と格子文を組み合わせた華やかな意匠が蓋から椀身にかけてめぐる、年始の設えにふさわしい典雅な一式です。

「正法寺蒔絵」とは、京都・正法寺（洛西）に伝わる寺宝の漆器に見られる意匠を写したもので、朱・黒・金の色彩を大胆に用い、格子文と花文を組み合わせた特徴的な構成を持ちます。中世以来の雅趣を今に伝える蒔絵意匠として知られ、特に年始の雑煮椀や祝いの器においては、格式ある好み物として重用されてきました。

椀の側面には朱と金で文様を重ね、格子状の文様の中には松皮菱を思わせる金文が配されています。周囲には梅の花を散らし、季節の始まりを告げる意匠構成として調和を保っています。蓋と椀身が連続した絵柄を形成するため、蓋を閉じた状態でも一体感のある景色が浮かび上がるのも、本作の魅力のひとつです。

製作を手がけた大橋荘兵衛は、代々続く京都の漆器製作家で、近代以降も宮中御用を務めるなど、確かな技術と品格ある作行きで広く知られています。