黒塗菊図金蒔絵煮物椀 10客組

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本品は、黒漆地に金蒔絵で菊の図をあしらった煮物椀の十客組。ふっくらとした椀形に沿って、蓋から身にかけて流れるように配された菊の文様は、繊細な葉脈表現と重なり合う花弁により、立体感と動きを感じさせる構成となっています。

菊は古来より長寿延命を象徴する吉祥花として尊ばれており、重陽の節句（9月9日）をはじめ、秋のもてなしにふさわしい意匠とされています。日本では皇室の御紋にも用いられるなど、格式と品位を象徴する存在でもあり、菊花を主題とする器物は儀式や祝いの設えに広く用いられてきました。

蓋裏にも同じ菊文様があしらわれており、器を手に取った際にも意匠が立ち現れる設計は、もてなしの所作を意識した丁寧な仕上げです。