本品は、四君子文様を蒔絵で施した吸物椀の十客組。黒漆地に金を用いて、梅・竹・菊・蘭の四つの植物が器面をめぐり、晴れやかな華やぎと静かな品格を兼ね備えた意匠となっています。

「四君子（しくんし）」とは、古く中国の文人の間で理想の人格を象徴する植物として尊ばれてきたもので、梅は厳冬に先駆けて咲く節操、竹は節を保って伸びる高潔、蘭は香り高く孤高なる品位、そして菊は晩秋に咲く気品と長寿を象徴します。それぞれが気候や生育環境に耐えながら美を保つことから、礼節と品位を重んじる図柄として茶道具や祝いの器に多く用いられてきました。

本椀では、蓋に菊と梅、椀身に竹と蘭が配され、器を構成する上でも文様同士が響き合うよう設計されています。特に蓋をした際、文様が一体となって現れるよう配慮された構図が特徴的で、細部の蒔絵にまで高い完成度がうかがえます。

四季を通じて通年で使える図柄でありながら、特に節目の設えや格式を重んじる場にふさわしい椀です。吉祥性と象徴性を併せ持つ、重宝すべき十客組の一例です。

• 商品名：松竹梅鶴亀銀蒔絵煮物椀　10客組
• サイズ：直径13㎝　高さ8㎝　高さ（身）5.7㎝
• 価格：720,000円