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岡田表寛作 竹節溜塗内黒稲雀蒔絵吸物椀 10客





本作は、京塗師・岡田表寛による吸物椀十客組。器の素地には木地ではなく天然の竹が用いられ、節の位置を活かして切り出した「竹節椀」である。竹特有の緩やかな膨らみと、僅かにうねる繊維の質感がそのまま器形に現れており、木地とは異なる素朴かつ生気のある佇まいを醸している。外側には穏やかな透明感をもつ溜塗を施し、竹の肌理と塗りの奥行きが調和した、しっとりとした風合いに仕上げられている。
内側は黒漆地とし、見込みには金蒔絵により稲と雀が描かれている。穂を垂らす稲は豊穣を、雀は子孫繁栄や五穀を守る吉鳥としての意味を担い、古くから蒔絵意匠として親しまれてきた取り合わせである。丸みを帯びた椀の中に、風にそよぐ稲穂と飛び交う雀が対角に配され、動きと余白のバランスが見事に構成されている。
製作は、京塗の名跡「表派」に連なる塗師・岡田表寛。江戸後期の木村表斎を祖とする表派は、茶道具や懐石道具の漆芸において高い評価を受けてきた流派であり、岡田表寛もその技と意匠を継ぐ一人である。竹という天然素材を用いながら、実用性と格調を両立させた本作は、素材・技法・意匠のいずれにおいても見どころが多く、懐石道具としてはもちろん、季節の設えや吉祥の場にもふさわしい一作である。
- 商品名:岡田表寛作 竹節溜塗内黒稲雀蒔絵吸物椀 10客
- サイズ:直径7.7㎝ 高さ8.6㎝ 高さ(身)6.5㎝
- 価格:300,000円
2025-06-15 | Posted in items | Comments Closed