表斎造　長寛写手遊蒔絵吸物椀10客組　共箱

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表派塗師・木村表斎による、佐野長寛写の吸物椀十客組。光沢を抑えた蝋色塗の地に、金蒔絵で「手遊蒔絵」が施されている。

「手遊蒔絵」とは、お手玉・鈴・独楽・羽根・折鶴など、子どもが手にとって遊ぶ玩具を題材とした蒔絵意匠に用いられる名称であると考えられる。元来は江戸後期の漆匠・佐野長寛が制作した椀の意匠に見られる構成に由来し、長寛の自由な発想と風雅な感覚を映し出す好例とされる。

本作においては、霊亀・折鶴・お手玉・鈴といった意匠が、蓋裏から椀内部にかけて丁寧に描かれており、それぞれが長寿・平安・豊穣・魔除けといった吉祥の象徴とされる。複数の象徴モチーフが遊ぶように配置されており、祝い膳の席にふさわしい華やぎと、さりげない縁起を兼ね備えている。

作者の木村表斎は、表派塗師の名跡を継ぎ、表千家の茶道具製作に携わった名工。喰初椀・懐石具・煙草盆など、幅広い道具類に精緻な塗りと品格ある蒔絵を施し、京塗の伝統を支えた。

本作は、そうした表斎の手によって、長寛椀の意匠を忠実に写しながらも、道具としての実用と美を両立させた仕上がりとなっている。共箱付き。