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鈴木表朔造 秋草色絵煮物椀 10客







本品は、初代 鈴木表朔による色絵煮物椀。黒漆地に朱と金彩で秋の七草のひとつ、桔梗や萩、薄が繊細に描かれた一対です。桔梗の端正な五弁花、風に揺れるような薄の穂、可憐な萩の小花が器面をめぐり、秋の野に広がる穏やかな風景が立ち上がるような構図となっています。
秋草文様は、豊穣の季節を象徴するとともに、移ろいゆく自然を愛でる日本人の感性を反映した意匠です。特に重陽の節句、月見、菊の宴など、秋の設えを要する場にふさわしい図柄であり、器を通じて季節の深まりを静かに伝えるものとして親しまれてきました。
本作を手がけた**初代 鈴木表朔(1874–1943)**は滋賀県に生まれ、京都で蒔絵師・鈴木長真の養子となり「表朔」を襲名。のちに木村表斎に師事し、明治末から昭和初期にかけて伊勢神宮神宝(1909年)や京都御所高御座の蒔絵(1911年)など、国家的儀式具の制作に従事しました。
また、京都における漆芸の一派「表派(おもては)」の中核を担った作家としても知られます。表派は、江戸後期以降に発展した京都漆芸の系譜で、宮中儀礼や貴顕の調度を数多く手がけた格式ある流派です。表朔はその技術と伝統を体現する存在として、漆芸史に確かな足跡を残しました。
厳かな場にもふさわしい格調と、秋の風趣を宿す一椀。形式と情感が調和した、優れた意匠の作例です。
- 商品名:鈴木表朔造 秋草色絵煮物椀 10客
- サイズ:直径13.4㎝ 高さ9.5㎝ 高さ(身)6㎝
- 価格:400,000円
2025-06-10 | Posted in items | Comments Closed